28歳人妻が引渡し前にリフォーム親方に後背位で貫かれ腹にぶっかけられた最終話

連載最終話。工事最終日、引き渡し書類の判子を押せば終わるはずだった午後、新品のシンクで初めて淹れた一杯のコーヒー。三週間で覚えた手順で、私は薬指の指輪を自分で外してシンクの縁に置き、後ろから貫かれてお腹に出された。堕ちた専業主婦の後日譚で閉じる告白。

28歳人妻が引渡し前にリフォーム親方に後背位で貫かれ腹にぶっかけられた最終話

新しいシンクの前で、私はまた、水を止め忘れている。

蛇口を最後まで開ききると、湯が、磨かれたばかりのステンレスの底を叩いて、とぷん、と低く跳ね返る。その音を、私は耳ではなくて、肋骨の内側で聞いている。指輪は、薬指にない。三ヶ月前の、あの最終日から、私はもう、それを薬指に戻していない。化粧台の引き出しの奥に、小さな桐の箱を買って、そこに入れている。夫はまだ、気づいていない。

水を止めて、台所のカウンターに手をついて、私は、その日のことを、もう一度なぞる。最後の昼下がり、最後のコーヒー、最後の「奥さん」。


七月の半ば、晴れていた。

雨はもう、十日近く降っていなかった。家の中の空気は、すっかり、新品の匂いに変わっていた。木材のニス、シリコンの目地、養生シートを剥がした床のフローリングの、まだワックスの匂いがする板。彼の汗と檜の削りかすの匂いは、もう、家のなかから、ほとんど消えていた。

それが、私には、いちばん怖かった。

朝、彼は最終チェックの工具と、薄い書類のファイルを持って、玄関に立った。「おはようございます。本日、引き渡しになります」と、いつもより少しだけ、改まった声で言った。「はい、よろしくお願いします」と私も頭を下げた。声が、自分でも驚くくらい、平静だった。

リビングのテーブルに書類を広げて、彼は淡々と説明を始めた。新しいキッチンの保証書、給湯器の取扱説明書、IHクッキングヒーターの操作方法。「ここの取っ手は、半年に一度、増し締めをしていただくとよいです」「混合栓のパッキンは、三年から五年で硬くなることがあります」——彼の指が、紙面を辿った。指の節の硬さを、私は、紙の上で見ていた。先週、その指がどこにいたかを、思い出さないようにしながら。

説明は、一時間で終わった。

「最後に、こちらの引き渡し書類に、奥さまのお名前と、判子をお願いいたします」

彼は、白い紙の、署名欄の場所を、指先で示した。私は、卓上に用意してあった印鑑を、手に取った。手のなかで、印鑑が、なぜか、いつもよりずっと重かった。

「先に、コーヒーを、淹れてもいいですか」

口から、それが出てきた。彼の手が、ほんの少しだけ止まった。彼は、書類から目を上げて、私を見た。それから、ゆっくりと、頷いた。

「いただきます」


新しいキッチンで、初めて、コーヒーを淹れた。

シンクの蛇口を捻ると、最初は水。それからレバーをこちらに回すと、湯が出た。三十秒もしないうちに、ちゃんと熱い湯になった。前のキッチンの、一分も待たないと湯が温まらなかった蛇口とは、違った。とぷん、と新品のシンクの底で、湯が跳ねた。その音を、私はもう一度、肋骨の内側で聞いた。

豆を挽いて、ドリッパーをセットして、湯を、いつもより少しだけ細く落とした。長く、長く、できるだけ長く、湯気が立ち上る時間が続くように。ガラスのサーバーの底に、深い茶色の液体が、ゆっくりと溜まっていった。

マグカップをふたつ。彼に運んだ。

「奥さん、ありがとうございます」

「いえ」

彼は、一口、飲んだ。それから、二口目を、ゆっくり、含んだ。マグカップの縁に、彼の唇が、長く、とどまっていた。三週間前、初めて彼が「美味しいですね」と言ったときと、同じ場所、同じ動作だった。私は、それを、見ていた。

カップを置いて、彼は、低く言った。

「奥さん、最後に、ひとつ、確認、お願いしてもいいですか」

書類のことではないことを、私はもう、知っていた。

私は、黙って、頷いた。立ち上がって、彼の前を通り、新しいキッチンの、新しいシンクの前まで、ゆっくり歩いた。シンクの縁に、手を、ついた。冷たいステンレスの、つるりとした感触が、手のひらに伝わった。

彼が、後ろに、立った。


最初は、首筋だった。

二週目と、同じ場所に、彼の唇が、降りてきた。けれど、今度は、彼は最初から舌で来なかった。唇で、後れ毛をかきわけて、皮膚に、長く、押し当てた。鼻が、私の耳の後ろで、深く息を吸った。「奥さんの匂い、覚えました」と、彼は低く言った。「家の匂いと、混ざる前の」

私は、シンクの縁に、強く手をついた。

彼の手が、後ろから、私のブラウスのボタンを、上から、ひとつずつ、外していった。急がなかった。本当に、急がなかった。三週間で、彼は、私の体の手順を、覚えていた。乳房までは、まだ届かない。届きそうで、届かない。三週間前と、同じ焦らしの順番を、彼は、自分から、選んでいた。

「奥さん」

彼が、もう一度呼んだ。私は答えなかった。代わりに、自分の左手を、シンクの縁から離して、薬指の指輪に、手をかけた。

外したのは、私だった。

二週目のときは、つけたままだった。彼は外さなかった。今日は、私が、自分で外した。薬指の付け根の、白く窪んだ跡の上を、自分の指の腹で、一度、なぞった。指輪は、シンクの縁に、ことり、と置いた。新品のステンレスに、金属が触れて、小さな音がした。

彼は、何も言わなかった。

ただ、私のうなじに、唇を、もう一度、深く押し当てた。


ブラウスが、肩から落ちた。

スカートのファスナーが、下りる音。ストッキングを、太ももの途中まで、ゆっくり下ろされる感触。彼の指の節の硬さが、私の太ももの内側の、白い皮膚の上を、上から下へ、長く、滑った。

舌が、先だった。

彼は、後ろから、私のうなじから、肩甲骨の窪みまで、舌で辿った。それから、私の体を、ゆっくり、彼のほうに振り向かせた。シンクの縁に、お尻を半分のせるようにして、私は、彼と、向き合った。

彼の口は、鎖骨に、それから、ようやく、乳房に降りてきた。先週、届かなかった先まで、今日は、舌が届いた。彼の舌の温度と、シンクのステンレスの冷たさが、私の背中と前で、別々の温度を作っていた。私は、声を、漏らさないように、唇を噛んだ。家のなかには、私たちのほかに、誰もいなかったのに、なぜか、声を、出せなかった。

指は、まだ、来なかった。

彼の舌が、お腹の薄い皮膚を辿って、おへその窪みに落ちて、それから、太ももの付け根まで、長く、長く、降りていった。床に、彼が、ゆっくりと膝をついた。新品のフローリングの、まだワックスの匂いがする板の上に。

「奥さん」

彼の声が、私の腰のいちばん低いところで、響いた。

私は、シンクの縁に、両手をついて、彼の頭の上を、見下ろした。短く刈り込んだ、白髪が少し混じった、彼の頭のつむじ。三週間、私が、ずっと目で追っていた、その背中の延長線上の、つむじ。

ようやく、彼の指が、来たのは、私が、長い長い息を、何度か吐いたあとだった。

人差し指の腹、それから、中指。先週は、ためらいながら入ってきた指が、今日は、私の内側を、もう知っていた。どこを、どのくらいの速さで、どのくらいの深さで触れば、私が、シンクの縁に、強く爪を立てるか。彼は、それを、覚えていた。

「……っ」

声が、ようやく、漏れた。

舌と、指。彼は、それを、同時に、別々のリズムで、動かした。私の体は、もう、自分のものではないみたいに、彼の手順に、勝手についていった。三週間で、彼は、私を、彼が知っている女に、作り変えていた。新しいキッチンの、新品のシンクの前で、私は、もう、前の私には戻れないことを、はっきりと、知ってしまった。


最後に、彼が、首筋に、もう一度、唇を当てた。

「奥さん」

その低さを、私は、新品のシンクの、まだ少しよそよそしい水音と、一緒に、記憶した。

服を整える時間は、思っていたよりずっと、静かだった。彼は、何も言わずに、私のブラウスのボタンを、下から、ひとつずつ、留めていった。スカートのファスナーを上げる音、ストッキングを直す衣擦れの音、それから、シンクの縁に置いたままの、私の指輪を、彼の指が、つまんだ音。

「奥さん」

彼が、指輪を、私の手のひらに、置いた。

「お返しします」

私は、指輪を、握りしめた。薬指には、戻さなかった。彼の前で戻すのが、なぜか、もう、できなかった。

リビングに戻って、私は、書類に判子を押した。署名欄に、自分の名前を、書いた。手が震えなかったことが、自分でも、少しだけ、悲しかった。彼は、書類を受け取って、深く頭を下げた。「ありがとうございました。何かあれば、いつでもご連絡ください」と、最後の、仕事の声で、言った。

「はい」と、私も、答えた。

玄関で、彼が、靴紐を結び直していた。最初の日と、同じ動作だった。首筋に、貼り付いた、短い髪。檜の削りかすの匂いは、もう、彼の作業着の、奥のほうにしか、残っていなかった。

「では」

彼は、頭を下げて、出ていった。


それから、三ヶ月が経った。

私は、いまも、木曜日になると、蛇口を、強く捻ってしまう。とぷん、と新品のシンクの底で湯が跳ねる、その音を、聞きたくて。湯気の立つコーヒーを、夫のためではなく、淹れてしまう。淹れて、誰も来ない玄関を、しばらく、見てしまう。

彼は、もう、来ない。

新しい家のキッチンは、私が、彼を、待つための部屋に、変わってしまった。指輪は、桐の箱の中で、薬指の形を、もう覚えていない。私は、その箱を、月に一度、開ける。開けて、しばらく見て、また閉じる。

夫の隣で眠るとき、私は、たまに、自分の左手薬指に、指で、輪を描く。何もない、空っぽの輪を。それから、首筋に、自分の指を、当てる。彼が舌で辿った、あの場所に。

家は、新しくなった。

私は、新しい家で、前より深く、堕ちた女になった。

それでも、判子は、押されてしまった。木曜日は、また、来週もやって来る。

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